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RoboCup JapanOpen 2007 Osaka シミュレーションリーグ参戦記

大阪電気通信大学 総合情報学部
メディアコンピュータシステム学科
升谷研究室
乾 裕貴
井上 良祐
川畑 勲
齋藤 拓也
関塚 弘明

目次

RoboCupシミュレーションリーグとは

外見上は、サッカーのコンピューターゲームに見えますが、モニター上に11対11の人工知能の選手達が戦っています。 外見は見慣れたサッカーゲームですが、見えない部分で内容は大きく異なります。 コンピューターゲームのサッカーは、1つのプログラムが全ての状況を知って、棋士が将棋を指すように考えて戦いますので、フォーメーションやチームワーク を持たせることが容易です。 しかし、シミュレーションリーグは、現実の体を持たないロボットとして動作しています。 これは、それぞれの選手が独立したプログラムで、仲間が何を考えているかは分かりません。見えるのは首の向いた方向だけ、見えたボールや選手の位置も意図 的に誤差を含めて、蹴ったボールも正確には飛びません。声に相当する通信も少ない情報のみで届くことすら保障されていません。 不完全な情報、不完全な結果、予測できない仲間、これらの状況は人工知能の重大な問題を豊富に含んでおり、サッカーとしてもゲームの質が最も高いといえま す。 また、このリーグは1996年のロボカップ・プレ大会から始まる最も古いリーグでもあります。

試合のルール

[シミュレーションリーグ]

  1. 11対11のプレイヤ、前半3000サイクル、後半3000サイクルの合わせて6000サイクルの時間を戦います。
  2. 10サイクルが現実時間では1秒となります。
  3. オフサイド、バックパス、フリーキックなどもあり、ほとんど通常のサッカーと変わりませんが、PKは存在しません。
  4. 外に出た場合、スローインでは無く、キックで中に入れます。

ODENS発足から大会まで

発足当初は、秋山さんの本のサンプルチームを起動させるだけでどうしたらいいのかわからず四苦八苦していました。サンプルチームのプログラムを変更して自 分たちのチームらしくするなんて、最初はできないと思っていたくらいです。升谷教授が自分たちでわかるようにしてくれました。 ある程度わかるようになってきたらチーム5人で各自分担してプログラムを変更する場所を決め、苦戦しながらも変更していきました。このときすでに大会まで 1ケ月くらいで本当に大会で他のチームと普通に戦えるか不安でいっぱいでした。 それからの1ヶ月がみんなバイトなど忙しいながらも、秋山さんの本をみながら徐々にプログラムムを変更していきました。何度も何度も過去のチームと戦わせ て改善して、大会前には使ったチームにも引き分けか、時々勝てるようになるくらいになりました。

RoboCup JapanOpen 2007 Osaka

[Robocup 2007]

今年のジャパンオープンのシミュレーションリーグには、YowAI(東京大学)、NopporoesO7(北海道情報大学システム情報学科)、 Puppets(福井大学)、HELIOS(産業技術総合研究所)、OPU_hana_2D(大阪府立大学)、KU-BOST(近畿大学)、 ODENS(大阪電気通信大学)、anct2007(旭川工業高等専門学校)、BLINKS(東京工業大学)、NCLO7(東洋大学)、Ri- One2007(立命館大学)、RaiC(福井高専)、TsubameGaeshi(T-Cube/電気通信大学)、Salesio(サレジオ工業高等専 門学校)、Kodawariyama(芝浦工業大学)、HyS(芝浦工業大学)、Obake_OPU(大阪府立大学RoboCupサークル)、 ThinkingAnts(東京電機大学)、Gemini(産業技術総合研究所)、Blue(青山学院大学)、BIG_KUBO_BEARS(早稲田大 学)、Okarobo(岡山大学)の合計22チームが参加しました。

今年、参加しているチームの約半分以上が、秋山さんという方の作ったHELLIOSというチームをベースにしていました。HELLIOSは、シミュレー ションリーグでは世界でも有数なチームであり、日本では一番のチームです。秋山さんは、HELLIOSに関する本も書いており、ODENSはこの本を参考 にして、HELLIOSベースのプログラムを作成しました。

[前日の様子][前日の様子]

実際に試合が始まるのは5月3日からでしたが、サーバーの設定や配線の準備、明日の試合の抽選などで前日には、現地入りをしました。 やはりどのチームも前日から準備を行い、チームによっては遠征と一緒で、キャリーバッグなどで来ている人もちらほらと見ました。 抽選も決まり有名大学が犇くなか、ODENSはグループBに書き込まれました。 とうとう試合が始まるんだという感覚を覚え、明日から3日間悔いのないように精一杯頑張ろうという気合が起こり、明日のことを考えながら就寝しました。

試合

5月3日

Nopporose07(北海道情報大学システム情報学科) 戦
→3対0でODENSの勝利

[プログラムチェック中]

ODENSシミュレーションでの初の公式試合。 この試合は、ほとんどディフェンスをすることなく勝てた試合でした。これは、相手の ディフェンスが3 人でミッドフィールダが4人いたことによったためだと思われます。 ODENS はディフェンスを使うことなく、フォワードとミッドフィールダだけで相手チー ムを潰す予定だったので、この試合はそれに適した試合だったと思われます。点数は、そ れぞれ555 サイクルと3553 サイクル、5097 サイクルに入れました。 そのうちの555 サイクルと5097 サイクルは、サイドからのシュートでぎりぎりで決まったものなので、運もあったのではないかと思われます。しかし、5097 サイクルのシュートは、HELLIOS ほどのシュートだったのでとても良いシュートだと思います。

RaiC2007(福井高専) 戦
→1対0でODENSの勝利

[プログラム変更中]

ODENS はオフサイドが多いのとパス回数も多いのが目立ちました。 パスは、ゴールサイドで三角パスを行うだけで、ドリブルでシュートに行か ないという点でした。結果シュートも入れてくれない状態になったのですが、2932サイク ルでうまく誰もいないと認識したのかシュートしてくれて、見事に1点を入れること が出来ました。

MIKK(岡山大学) 戦
→0対1でODENSの敗北

この試合の時 は、一時的にゴールキーパーを改良して挑みました。改良した点は、相手がボール を味方側のフィールド又はゴール付近に来ると、キーパーが飛び出すようにしました。 しかし、それが負けの原因にもなってしまいました。相手がミドルシュートを打ってくるのに 反応ができず、4044 サイクルで入れられました。

YowAI(東京大学) 戦
→0対0で引き分け

[観戦中]

この試合は序盤からODENSがリードをしていた。敵のゴール前まで一気に攻める ものの後一歩のシュートが足りず攻め切れない。そして, そのまま試合が終了してし まった。敵はボールがセンターラインを越えてくるとゴール前に3 人〜4 人きて守備 についた。もし、ボールを敵に取られたとしても敵はカウンターが弱くこちら側の キーパー前まで攻められることがは滅多になかった。こちらがゴール横のでもたつ いていたときにはHELIOS ベースのところみたいに止まらずボールを取ろうとタッ クルをしてきた。

salesio(サレジオ工業高等専門学校) 戦
→4対0でODENSの勝利

[観戦中]

このチームは違う試合でもエラーが出てほとんど動けず、 試合開始後からODENSがボールをずっと所持していました。試合が終るまでボールが ODENS 側のセンターラインを越えることはありませんでしたが、やはりこちらの攻めはゴー ルライン横にボールを持って行き、そこでどこかのプログラムがループしてなかな かシュートをうたない状況が続いていました。ときどきゴール前に出ている仲間にパス することがあり、そうするとパスをもらった者がシュートをして得点が入るという 形でした。後半の4200サイクルあたりでsalesio がボールを持つと全員がストップ し、動かなくなり試合が終了しました。多分、こちらのプログラムはタックルをしに行 かないようなっていたんだと思います。salesio の方もプログラムがおかしくなったのかわからないが、動かないまま試合が終了しました。

TsubameGaeshi(T-Cube/電気通信大学)戦(1回目)
→3対0でODENSの勝利

[トーナメント結果]

ゴール前にキーパーしかいないにもかかわらず、キーパーの前でうろうろしてパスもしないような状況がいくつも見られました。センターにいるプレイヤーがた またまキーパー近くに寄るとパスしてシュートするという状況です。確実にシュートが決まるという場面で、シュートをせずパスをするということが多かったで す。守備は相手はパスが多いので、パスカットが多く見られました。しかし、ゴール前ではボールを追いかけすぎて、危険な場面がいくつかありました。

5月4日

Anct2007(旭川工業高等専門学校) 戦
→0対0で引き分け

[トーナメント表]

この試合を見てみると、お互いが同じような力量を持っているといるように見えました。同じHELLIOSをベースにしているので、動きが多少なりとも似てくる部分があります。 しかし、ボールはお互いの陣地で取り合うことが多く、ゴール前で取り合い、相手は半分カウンターを狙うような形で、攻めているのが一番の印象に残りました。

ThinkingAnts(東京電機大学) 戦
→0対0で引き分け

ボール支配率はこちらが勝ってるのに対して、ゴール前での結果はこちらが負けていました。相手チームの左コーナでのパスで手間取り、相手チームのスタミナが回復して反 対に一気に攻められるパターンが4,5回ほどありました。 シュート回数もあちらが4に対してこちらが0という結果から、プログラム の完成度は、相手の方が上であると言えるでしょう。

Big_KUBO_BEARS(早稲田大学) 戦
→0対0で引き分け

[リーグ結果]

このチームは比較的に守りの人数が多いようで、ゴール前に4人ほど配置されています。 そのせいもあってか、ODENSチームはあまりシュートを打たないが、さらに打てなくなっていました。 全体の分析としては、ボールの取り合いが真ん中で行われており、このチームは守りが強いということがわかりました。

5月5日

TsubameGaeshi(T-Cube/電気通信大学)戦(2回目)
→6対0でODENSの勝利

[リーグ表]

このチームとは、2回目の試合です。 1回目と同様ゴール前でうろうろすることが多かったのですが、今回はスムーズにパスからシュートへ繋げる場面が何回か見られました。危険な場面はほとんど なく、ほとんどボールを持っていました。相手が相手ゴールより後ろに下がるため(観客へアピール?)1 回目、2 回目ともにオフサイドはほとんどありませんでした。

NCL07(東洋大学) 戦
→0対1でODENSの敗北

[リーグ表]

この試合でも敵コーナでの三角パスが発生し、オフサイドの連発をまねきました。 それにより後半3684 のサイクル時にMIKK 以来の点を入れられました (MIKK の時はキーパープログラムを変えて失敗したせいでもありますが)。 NCL07の方がODENSに比べて完成度は高く、攻守ともにバランスが取れていたと思います。

全ての試合を通してのODENSの分析

初出場で22チーム中第6位という成績に関してはいい結果だと思います。 しかし、オフェンスの点ではゴールサイドで三角パスをするだけで シュートに行こうとせず、すぐにオフサイドになってしまうパターンが多かったです。 これらの点は、フォーメーションでボールをゴール横まで持っていったときに、敵ゴール前に仲間を行かせるようにすれば、いつも後ろにいる仲間にパスをすることをせずに、ゴール前の仲間にパスなどをし、敵に取られたとしても、 シュートのチャンスを作れるようにできたらいいなと思います。 ディフェンスに関しては悪い点はあまり見られず(あまり攻められていないという点もあるが) これらの改良より、オフェンスの点を重点的に改良したほうが次につながると思います。

シミュレーションリーグの結果

優勝 : HELIOS (産業技術総合研究所)
準優勝 : OPU_hana_2D (大阪府立大学)
第3位 : ThinkingAnts (東京電機大学)
第6位 : ODENS (大阪電気通信大学)

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