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RoboCup JapanOpen 2008 沼津 参戦記 ヒト型ロボット
大阪電気通信大学 総合情報学部
メディアコンピュータシステム学科
升谷研究室
小松 大祐
東 孝二
江口 達也
岡田 隆広
目次
小型ロボットリーグにおけるヒト型ロボット
現在、ロボカップの小型ロボットリーグ(Small Size robot League、以下SSL)では、3輪または4輪のオムニホイールを利用した車輪型ロボットを使用していますが、年々参加チームのレベルが上がり技術的に 飽和状態になりつつあります。そこで、現SSLと同じように外部カメラを用いるシステムを継承しつつ、ロボット本体を『車輪型』から『ヒト型』に置き換え るアイディアが、2007年に日本の有志チームから提案されました。私たちはその提案チームの一つです。
今回のRoboCup JapanOpen 2008沼津では、その先駆けとして、現SSLのフィールドの半分を利用して3対3のデモ試合が行われました。
ロボカップには従来からヒューマノイドリーグがありますが、この取り組みはそれとは別の試みです。なお、このときには新しい提案を「New SSL」と呼んでいましたが、その後「SSL Humanoid」という名称になりました。
1日目
今回、New SSLとして、近藤科学から発売されているKHR-1HVを使っての2足歩行ロボットによるデモを行いました。このデモでは、ロボットを実際に動かすのは リモコンなど人の手ではなく、現SSLの車輪型ロボットと同じ、天井カメラを利用したプログラムによる自律動作を実現させています。 そのスタートである1日目では、まずロボット1台だけによる一人サッカーと呼ばれるデモを行いました。
一人サッカーデモでは、まずロボットは自身の位置とボールの位置、またゴールの位置を必要に応じて認識します。そして、ボールをゴールの方向へ蹴るために 適した位置、つまり『ゴールが正面にあり、かつボールが目の前にある』という位置へ移動します。移動する際も、目標の場所まで直線的に歩いていくのではな く、途中でボールにぶつからないように回り込むようになっています。そして目標の場所に着くと、ボールの方向を向いて微調整・シュートする仕組みです。
この日は要調整といった出来でしたが、シュート動作を取ることには成功しました。
2日目
この日は、2足歩行に取り組んで初の3対3の同時起動に挑戦しましたが、命令が届かないなどの失敗が相次ぎ、ほとんど棒立ちでうまく動かない状態でした。そんな中でこの日動いたものとして、2足歩行ロボットによる障害物回避デモがあります。
このデモは読んで字のごとくですが、動作させるロボットとボールとの経路の間に敵ロボットを配置して、それを回避して回り込んでからシュートをするという ものです。途中、電池などの原因でうまく動作しないこともありましたが、ちゃんと回避行動をとる事に成功しています。ただし、この障害物回避のプログラム は車輪型で使用しているものを流用したもので、要調整といった感じでした。
3日目
この日のデモはかなり良い感じで動作しました。まず、2日目に出来なかった3対3の模擬サッカー試合が”普通に”出来たこと、さらには期待されていた『スローイン』をすることにも成功したことはとても意味のあることです。
そもそも手がない車輪型にできないスローインはヒト型であるからこその動作であり、自律動作においてスローインをさせることは目標であり課題であったの で、成功した瞬間はとても感動しました。そのうえ、3対3で模擬試合ができたことも今後のSSLでの自律動作によるヒト型サッカーを発展させていくための 基礎の1つになれたという点では、価値のあるデモであったといえます。
今回の目玉であったスローインですが、基本的にはシュートの動作と大差ありません。目標地点のほうに投げれる位置まで回りこみ、小歩行で位置調整をした後 にスローインモーションを動作させるといったものです。2日目まではこの小歩行での位置調整がうまくいかなかったため、2日目のデモ終了後から調整を行う 必要がありました。元のモーションでは、足をあげてはいるもののほぼ摺り足になっており、ロボットの基本姿勢の調整次第ではうまく真っ直ぐ歩けなかったの ですが、一度に歩行できる歩数を制限することにより、軌道が曲がり始める前に止めるという調整を行いました。
ヒト型ロボットのデモの動画(YouTube)
総括
今回開催されたNewSSLとしてのヒト型ロボットのデモでは、内蔵されているプログラムがまだまだ改良の余地があるものであったために、満足のいく、高 度な動作までは実現できませんでした。しかしながら、将来的に行われるであろうヒト型ロボットの自律動作によるサッカーを実現可能であるという可能性は大 いに感じ取れる内容であったと思います。 特に3日目に成功したスローインは、現SSLでは実装され得ない動作であることは明確であり、人の目を楽しませるという点においても、技術的に高度である という点においてもヒト型ロボットでリーグ開催することの有用性を示せたといえます。
全てがプラスの出来事ばかりではなかったですが、今はマイナス要素でもそれをプラスに変えていく努力を今後もしなくては、と考えさせられる意義ある大会であったと思います。