みなさん,はじめまして
大阪電気通信大学総合情報学部メデァコンピュータシステム学科(学内略称T学科)の南角 茂樹(なんかく しげき)といいます。
今回はT学科のホームページリニューアルに伴って,教員コラムを掲載することになり,最初に私が担当することになりました。
大学では教員は授業を教える以外に,研究室というものを作って,その分野に興味を持った学生とともに特定分野の研究をします。そして私の研究室名は“組み込みリアルタイムシステム研究室”といいます。
おそらく皆さんは“組み込みリアルタイムシステム”といってもよくわからないと思いますが,その説明の前に簡単に自己紹介をしたいと思います。
実は私はこの大学に来て4年目で,つまりまだ3年半ほどしか経っていません。大学に来る前は三菱電機で20年以上研究や製品の開発をしていました。その時かかわっていた製品は,工業ロボットや工作機械制御用コンピュータ,工場制御用コンピュータ,エレベータ,宇宙衛星などいずれも,国内におけるシェア(占有率)が1位や2位の製品ばかりで是非色々お話したいのですが,家庭用の製品ではないので皆さんには,まだなじみがないと思うので,お話はまた別の機会にします。
それでは,組み込みシステムに話を戻したいと思います。
最初に下の写真を見てください。
これは関西や関東,九州の私鉄やJRそれに新幹線等のIC乗車券(ICカード)です。
次に下の写真をみてください。
これはプリペイド式乗車券や回数券(磁気カード,磁気ストライプカード)です。
どちらも電車に乗るなどの用途に関しては似ている部分もありますが,中身構造は全然違います。
プリペイド式乗車券や回数券は,全面磁気カードとよばれ裏面が磁性体で覆われていて全面に記録できる薄いカードです。仕組みとしてはあまり見かけなくなったビデオテープなどと同じで塗布された磁性体(磁石みたいなものです)に磁気の+と-を利用して情報を書き込みます。書き込める情報の量は70バイト(漢字35文字程度)しかありません。
一方ICカードは違います。見かけはロボットや携帯電話とは大きく異なるICカードですが,実は同じ組み込みシステムに分類されるものです。
組み込みシステムの特徴の1つは内部にコンピュータ(マイクロプロセッサ)を備えていることですが,まさにICカードは内部にコンピュータを備えています。
下の図を見てください,これがICカードの内部構造を簡略化して示したものです。
実はあの薄いカードの中にコンピュータ(マイクロプロセッサ)やメモリまでも備えているのは驚きでしょう.
ところで図をみるとアンテナまで備えていることが分かります。ICカードにはいくつかの種類がありますが,写真の物はすべて非接触式ICカードと呼ばれるもので,リーダ/ライタである改札機とは電波による無線方式で通信を行い情報の書き込み読み出しを行います。そのためにアンテナまで備えているのです。
ところで図を見て何か不思議なことに気づきませんでしたか?
そう電池がないですよね?
電池がなくて,どうしてコンピュータを動かして暗号処理や信号の送受信が出来るのでしょう?
実はリーダ/ライタである改札から電磁波を受けて電磁誘導でカードで電力を発生させているのです(電力伝送)
情報を記憶できるサイズも,例えば32KBの物だと全面磁気カードに比べて400倍以上あります。またコンピュータや専用回路を備えているためデータの暗号化も簡単にしてしまいます。
小さなカードの中に色々な機能が詰まっていますね
おそらくパソコンでもICカードでやっているのと同じような機能は実現できるでしょう。
でもどちらが便利ですか,電車に乗るのにICカード1枚を持っていけばよいのと,パソコンを持っていかねばならないのと?
普通は,パソコンンを持ち歩いたり,パソコンを使って改札を通ったりはしたくありませんよね。
ここにも組み込みシステムが必要な理由が有ります。
このように,思いがけないものも組み込みシステムだということは分かったと思いますが,実は世の中は 携帯電話,地上デジタルテレビ,ゲーム機本体,自動車, 新幹線などの鉄道,エスカレーターやエレベータ,冷蔵庫,電子レンジなどの様々な家電製品,ロボット,デジタルカメラ,自動販売機,など組み込みシステムに満ち溢れ,皆さんもそれに囲まれて生活しています。もはやそれなくして日常生活を送ることはできませんし,皆さんも知らない間に様々な組み込みシステムを使っています。
これらの組み込みシステムは共通技術と,製品ごとの固有の技術から成り立っています。
共通技術とは,プログラミング技術,ハードウェア技術,ハードウェアとソフトウェアが連携するための技術,リアルタイムOS,人と組み込みシステムが対話するための技術,表示(グラフィック)技術, ネットワーク技術などがあります。これらはすべてT学科できちんと学ぶことができます。
製品ごとの固有の技術は,直接は大学では学ぶのは難しいですが,固有の技術を学ぶための基礎となる技術は学ぶことはできますし,企業の方を招いていろいろな話を聞いたり,質問したりする授業もあります。
是非我々とともに,これから,組み込みシステムを開発していくための技術を身につけませんか, 待っています。