大阪電気通信大学 総合情報学部
メディアコンピュータシステム学科
升谷研究室
金谷 境一
木村 尭海
植田 康生
蔭久 佳宏
近藤 敦
田近 宏希
中島 誠
森口 貴博
目次
RoboCup小型ロボットリーグとは
小型ロボットリーグでは、ボールとしてオレンジ色のゴルフボールを用い、 直径18センチメートルの大きさのロボットを1チーム5台用いて戦います。機体が小さく、ロボット自体には 目となるカメラを取り付けることは難しいので、フィールドの上空にカメラを取り付けることが許されています。 そのカメラで撮影した映像を自分のチームのPCに送り、それを画像処理してロボットやボールの位置を求め、 その配置によって戦略を立て、各ロボットに無線で命令を送りロボットを動かします。 試合が始まったら、人はコンピュータやロボットを操作することはできません。
ODENSの大会までの取り組み
ODENSとしてRoboCup小型リーグに参戦するのは今年で2回目です。したがって、 昨年の反省点を改善していくことが今年の主な課題でした。
今年新たに配属されたプレゼミ生(現3年生)は、配属当初からロボットの行動を決定するプログラムを 改良しながら理解することから始めました。 そして、改良したプログラムを評価するために何度も実機で動かして検証を行いました。 その度に判明するさまざまな不具合を一つ一つ解消していき、みるみるロボットの動きはよくなっていきました。
昨年から引き続き参加する4年生も、卒業研究を経てシステム全体の能力向上を実現し、より扱いやすい システム、より強力で戦略性の高い行動決定プログラムを作成しました。また、3年生を力強く牽引する リーダーシップを発揮し、多大な安心感を3年生に与えました。
今年は静岡県沼津市で開催されるので、大阪とは違い、持ち込んだロボットに不具合があったり 忘れ物があってもすぐには対応できません。準備を怠らず、体調も万全にして沼津へ向かいました。
RoboCup Japan Open 2008 沼津
今年のRoboCup JapanOpen 2008 沼津 小型ロボットリーグには、豊田工業高等専門学校「KIKS」、愛知県立大学「RoboDragons」、電気通信大学「fWing207」、中部大学 「Owaribito-CU」、イランからの参加チーム「Parsian Robotic」、そして大阪電気通信大学「ODENS」の計6チームが出場しました。この6チームが予選リーグ(総当たり戦)を2日間にわたり行い、上 位4チームが決勝トーナメントに進出します。
試合の一般公開は5月3日からですが、チームはその前日に大学からロボットやカメラ、PCなどを運び込み、上空カメラの設置、ロボットやPCの調節を行い ます。小型ロボットリーグの参加チームの中では一番に会場入りしたので、早々にセッティングを終わらせ、各自カメラ映像やプログラムの調整、ロボットの整 備などをしていました。
さて、いよいよ大会本番です。今年はプログラムもロボットも準備万端の状態で沼津までやって来ました。 メンバー全員の意気込みは十分です。
しかし、敵は思わぬところに潜んでいたのです……。
試合
全試合のダイジェスト動画(YouTube)
5月3日
対 KIKS(豊田工業高等専門学校)戦
両チームにとって、今年のロボカップジャパンオープンの最初の試合です。この日は天候が非常に不安定で、 また会場の屋根が太陽光を透過しやすい素材だったために、会場の明るさが激しく変化し、天井のカメラが ボールやマーカーをうまく判別できない状態での試合でした。
ボールやロボットの位置がしっかりと把握できず、パスやシュートがまともに行うことができません。 それはKIKSも同じようで、作戦通り動くことができない様子でした。 試合の序盤、KIKSにシュートを許してしまい一点を先制されてしまいましたが、 タイムアウトやハーフタイムの時間を駆使し、なんとかカメラとサーバーの正常化ができたため、 後半に点を得ることができました。
フラストレーションの溜まる試合でしたが、結果的に1-3で勝利することができました。
対 RoboDragons(愛知県立大学)戦
ODENSにとっての第2試合の相手は、RoboCup常勝チームで、昨年は世界大会で3位入賞の経験のあるRoboDragonsです。 前の試合に引き続き明るさが不安定な状態での試合となりました。やはり、お互いにカメラによる位置取りが うまくできず、最初はまともな試合になっていませんでした。 しかし、そんな中でもODENSは華麗なパスまわしを行うなど、チームプレイの片鱗を見ることはできました。
そうして、貴重な先制点を手にいれましたが、その後はRoboDragonsが安定し始め、反対にODENSの調子が悪く なってきてしまいます。その隙を突かれ点を取り返されてしまい、次々と3点も入れられてしまいました。 結果、3-1で負けてしまいましたが、常勝チームに対して1点を取れたことは非常にうれしいことです。
5月4日
対 Parsian Robotic (イラン) 戦
Parsian Roboticはイランからの参加チームです。初日はカメラのビジョンシステムやサーバ等に問題が起こり、 あまり良い結果をだせなかったようですが、どうやら今日は問題が改善されたらしくある程度動くようになった ようです。
しかしこの日も天候が不安定で明るくなったり暗くなったりしたために、天井カメラが上手くロボットのマーカーを 判別できずこちらのロボット数台の動きが不調になり、なかなか戦略どおりに動くことができません。それでも、 こちらのキックオフから直接ゴールに決めるというプレイを見せ先制点を取りました。
しかしその後すぐに、キックオフ時から味方にパスせず直接ゴールしての得点が有効かどうかについて 審議が起こり、しばらく試合が中断されました。 審議の結果、キックオフ時からの直接ゴールは有効と認められ、先制点となりました。 その後さらにもう1点ゴールを決めることができ、2-0でODENSの勝利となりました。
対 fWing207(電気通信大学)戦
fWing207戦では相手のロボットの数台が調子が悪く、時には5台対3台の状態で試合が進んだりもしました。 また、相手のロボットがフィールド上に5台いても実質2台程度しか試合に参加できていないなど、 ビジョンシステムやロボットにかなり問題を抱えていたようです。fWing207の方々の悔しそうな表情が印象的でした。
ODENSはここぞとばかりに、ゴールを狙いに行きました。fWing207のゴールキーパーは良い動きをしていましたが、 こちらのロボットの動きに対応しきれず、さらにロングシュートも決まるなど、結果8-0でODENSの圧勝でした。
対 Owaribito-CU(中部大学)戦
Owaribito-CUはチップキック(ボールを浮かせるキック)や遠距離からでもゴールを狙える強力なシュートが 目立つチームです。 試合時もチップキックや強力なシュートを多く繰り出され苦戦しましたが、遠距離からのシュートの場合は精度が やや悪いのか、ゴールの少し外側に外れる場面が度々ありました。また、フィールドの端では上手くマーカーを 判別できないらしく、ゴールキックやコーナーキック時におかしな動きを見せるなど、チャンスを活かせられない 場面も見られました。
一方、こちらはディフェンダーとキーパーで相手のシュートを防ぎ、得意とするパスで上手く味方につなげ シュートするという連携が決まり、結果2-0でODENSのチームワークの勝利でした。
5月5日
対 Owaribito-CU(中部大学)戦
前日の予選最終戦で戦った相手との対戦となった準決勝です。2-0で前回は勝った相手です。
前半は攻め込むシーンが多くありました。ですが、相手はキッ力が強く相手サイドからでもシュートを狙ってきます。またチップキックを使い展開を打破してこようとしてきます。 こちらもシュートを打ちますが、相手のディフェンスやキーパーに防がれていました。 キーパーに防がれたボールからコーナーキックを得て、チャンスとばかりにセットプレイからの反射シュート で先制点を取りました。この直後の相手のキックオフで、強烈なシュートにヒヤリと しましたが、ゴールポストに当たり失点せずにすみました。
後半戦に入ってもペースはODENS側のままでした。ですが序盤はどちらもゴールを奪うことができません。 しかし、中盤に入りスローインからのパスをダイレクトでシュートを打ちゴールを奪うことができました。 ここから終盤にかけては一進一退の攻防が続きました。パスをつないでゴールを狙っていきましたが ゴールを奪うことができず、相手の強力なシュートもこちらのゴールの枠を捉えきれません。
ですが試合終了間際にこちらのセンターラインからのシュートが決まり3-0で試合終了となりました。 これで決勝まで駒を進めることができました。
対 RoboDragons(愛知県立大学)戦
決勝の相手は準決勝でfwing2007を破り決勝に進んできたRoboDragonsです。予選では3-1で負けた相手です。
前半戦は序盤から相手のペースで、攻め込まれる場面が多くピンチの連続でした。しかしディフェンダーや ゴールキーパーが相手のシュートを防ぎ失点せずにいました。ですが、センターライン付近から 打たれたシュートに、一瞬動きがおかしくなったゴールキーパーが反応できず失点してしまいました。
このあとも攻め込まれる場面が多くなかなかチャンスを作れません。シュートを打っても2体いるディフェンスに カットされたり、相手サイドにボールを入れても、自陣サイドにいた相手ロボットのリカバリーが早く、 ボールをうまく相手ゴール付近まで進めることができません。そしてそのまま点を奪えずに前半が終了しました。
後半戦に入っても流れは変わらずピンチの連続で、守るのが精一杯でなかなか攻撃に移れずにいました。 何度かチャンスを作ってもシュートまでいけなかったり、シュートを打ってもキーパーに防がれたり ゴールの枠を捉え切れなかったりして得点できず、そのまま試合が終了し最初の失点により0-1で負けて しまい、予選の雪辱を晴らすことはできませんでした。
参戦のまとめ
今年のRoboCupの戦績は、予選では4勝1敗、決勝リーグでは1勝1敗で準優勝となり、躍進の年となりました。予選・決勝ともに、1敗はRoboDragons(愛知県立大学)との対戦によるものなので、このチームの総合的な能力の高さがうかがい知れました。
今年の大会も、ロボット自体はいじらず、戦略(プログラム)のチューニングのみで戦いました。その結果準優勝となり、正常進化を果たしたのだと思います。 しかしながら、味方同士でボールを取り合ってしまう行動がよくあり、これがタイムロス、ひいてはその隙に相手にボールを奪われてしまうといったことにつな がってしまいました。さらに、決勝トーナメント時には、故障などにより正常に動作するロボットが6台しかなかったりと、ギリギリの状態で戦う事態が発生し たことは大きな反省点です。
また、急激に表情を変える天候(太陽光)に、RoboCup参加の各リーグはかなり苦しめらていたようでした。小型ロボットリーグでは、ロボットやボール の位置が判別できなくなり、まったく試合にならなかったこともありました。この経験から、照度の急激な変化にも対応できる画像処理サーバのシステム構築が 今後の大きな課題の一つとなりました。
さて、来年度は新型ロボットを投入する予定です。しかし、現在のロボットとは勝手が違うので、うまく制御できるようにするのが課題です。さらにプログラムにも改良を加えていき、来年度こそ優勝を手にできるように取り組んでいきたいと思います。
小型ロボットリーグの結果
- 優勝: RoboDragons (愛知県立大学)
- 準優勝: ODENS (大阪電気通信大学)
- 第3位: Owaribito-CU (中部大学)