RoboCup Japan Open 2010 大阪 参戦記 シミュレーション3D

大阪電気通信大学 総合情報学部
メディアコンピュータシステム学科
升谷研究室
田近 宏樹
木内 和也
丸山 拓也

目次

RoboCupシミュレーション3Dリーグとは

RoboCupシミュレーション3Dリーグとは、コンピュータの仮想空間の中で物理計算に基づいてサッカーを行う競技です。仮想空間では、実際の世界を再現していて重力や摩擦なども存在しています。シミュレーションで使用されているロボットは、フランスのアルデバラン社の『NAO』(図1)をモデルとしています。図2が仮想空間におけるロボットです。このリーグのシステムは、主催者が用意するサーバプログラムと、各参加チームが用意するクライアントプログラムから構成されています。

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図1 実機のNAO 図2 ロボットのモデル 図3 フィールド

図4のように、仮想空間内でロボットが得る様々なセンサ情報(視覚から得られた他の物体のデータ、関節の角度、胴体の加速度など)がサーバからクライアントへ送られます。クライアントでは、その情報に基づき、対応するロボットへの指令を決定し、図5のようにサーバへ送ります。サーバでは送られてきた指令に応じて、ロボットのモデルが動作します。以上を繰り返すことによってシミュレーションが進行します。クライアントからサーバへ送る指令は、ロボットの全ての関節の動きのみです。したがって、適切な指令を与えないと、仮想空間のロボットは歩くことさえもできません。

1チームのロボットの数は、前回は3体まででしたが、今回から6体になりました。

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図4 サーバからクライアントへ 図5 クライアントからサーバへ

ODENSの大会までの取り組み

ODENSが、 シミュレーション3Dリーグに参戦するのは今回が2回目です。前回の順位は、4位でしたので、今回はさらに上位を目指して取り組みました。

ODENSでは、6体のロボットをゴールキーパー1体、ディフェンスが3体、オフェンスが2体に割り振り、守備を重視したフォーメーションにしました。そして、チームプレイを実現するために、オフェンスでは、お互いボールに近い仲間を邪魔しないように譲り合うようにしました。ディフェンスでは、自分がどこに居るのかを判断できるようにし、その情報を基にボールの位置によって待機位置を変更したり、味方との距離によって行動を決めるようにしました。

RoboCup Japan Open 2010 大阪

大まかな3日間の内容

  • 1日目・2日目:予選リーグ
    7チーム参加で、総当り戦を行いました。
  • 3日目:決勝トーナメント
    決勝トーナメントでは、予選リーグの結果を元に、ダブルエリミネーション方式と呼ばれる、一度まで負けが許されるトーナメント方式で試合が行われました。

5月2日 予選リーグ1日目

試合時間は前半後半5分の10分。引き分けの場合は、そのまま試合終了です。勝点の計算は、勝ちが3点、引き分けが1点、負けが0点で、勝点が同じならば、得失点差で順位を決めるというルールでした。

Hillstone United3D(慶應義塾大学)戦

ODENS 4 – 0 Hillstone United3dvshillstone

今年のRoboCupでの初戦です。Hillstone United3Dは、各ロボットにポジションを定義し、ボールの位置で戦略を切り替えるというものでしたが、あまり上手くいかなかったようで、こちらはガラ空きになっていたゴールへ確実にシュートを決めて、4点を取り、勝つことができました。

Fifty-Storms3D(芝浦工業大学)

ODENS 3 – 0 Fifty-Stoms3Dvsfifty

Fifty-Stoms3Dは、まだロボットをまっすぐ走らせることしかできないチームでした。おかげで、こちらは確実にシュートを決めて3-0で勝利しました。

FUT-K(福井工業大学)戦

ODENS 0 – 2 FUT-Kvsfutk

FUT-Kは、去年の優勝チームで、今年も強いことを予想していました。試合が始まると、ODENSのロボットがひたすらボールを探すという状態に陥ってしまいました。原因は相手のロボット同士が通信でやり取りしている内容を、ロボットの視界情報と間違ってしまい、ボールなどが一切見えない状態になっていることでした。試合後、すぐに修正をしましたが、この試合では歯がゆい結果となってしまいました。

opuCI_3D(大阪府立大学)戦

ODENS 0 – 1 opuCI_3Dvsopuci

opuCIは、去年の準優勝チームでした。前半、蹴り出したボールを奪われてしまい、取り返すことができず、ゴールを許してしまいました。後半も攻める事ができず、0-1で負けてしまいました。

一日目は、4戦2勝2敗という結果になりました。

5月3日 予選リーグ2日目

Konohen (電気通信大学)戦

ODENS 0 – 0 Konohenvskonohen

Konohenは、ポジション等の役割が無く、全ロボットがボールへと向かってくるチームでした。しかし、この動きのせいで、こちらがボールを蹴り出しても相手のロボットに阻まれてしまい、思うようにゴールへとボールを進めることができませんでした。その結果、引き分けで終わってしまいました。

NomoFC(大阪大学)戦

ODENS 2 – 0 NomoFCvsnomofc

NomoFCさんは、起き上がることができないチームでした。おかげで、確実にシュートを決めて、2-0で勝利を収めました。

予選リーグの結果

  • 第1位: FUT-K(福井工業大学)
  • 第2位: opuCI_3D(大阪府立大学)
  • 第3位: ODENS(大阪電気通信大学)
FUT-K Fifty-Storms3d ODENS HillStoneU opuCI Konohen NomoFC 勝点 順位
FUT-K 4-0 2-0 3-0 0-0 1-0 1-0 16 1
Fifty-Storms3D 0-4 0-3 0-1 0-5 0-0 0-0 2 7
ODENS 0-2 3-0 4-0 0-1 0-0 2-0 10 3
Hillstone United 3D 0-3 1-0 0-4 0-0 0-0 1-0 8 4
opuCI_3D 0-0 5-0 1-0 0-0 2-0 3-0 14 2
Konohen 0-1 0-0 0-0 0-0 0-2 0-0 4 5
NomoFC 0-1 0-0 0-2 0-1 0-3 0-0 2 6

5月4日 決勝トーナメント

決勝トーナメントは、予選リーグの結果を基にトーナメントが組まれ、試合時間は予選と前半後半5分の合計10分でした。引き分けの場合は、予選リーグの結果の上位者が勝利となるルールです。

決勝ラウンド1回戦

ODENS 2 – 0 NomoFCvsnomofc2

NomoFCは立ち上がるプログラムを動かすための判定が上手くいかず、この試合でも、シュートを決めて2-0で勝つことができました。

決勝ラウンド2回戦

ODENS 0 – 1 FUT-Kvsfutk2

予選リーグでの問題を解決しての戦いです。しかし、主導権を握れず、ゴール前でなんとか守っていたものの1点を取られ、負けてしまいました。

敗者ラウンド2回戦

ODENS 0 – 0 Konohenvskonohen2

予選リーグでは、相手ロボットに阻まれ得点を取ることができなかったチームです。決勝トーナメントでもシュートを決めることができず0-0で終わってしまいました。しかし、ルールによって、ODENSは勝ち進めることができました。

敗者ラウンド3回戦

ODENS 0 – 0 HillStoneUnited3Dvshillstone2

予選では、4点を取って勝ったチームでしたが、決勝では、上手く行動を阻まれて点数を取ることができませんでした。しかし、ルールによって、この試合もODENSは勝ち進めることができました。

3位決定戦

ODENS 0 – 2 opuCI_3Dkaijo

前半、後半ともに、ODENSはボールを支配することができませんでした。なんとか守り通そうとするものの、ゴールキーパーとポストの間にシュートを決められ2点を取られてしまい、負けてしまいました。
結果ODENSは3位となりました。

決勝トーナメントの結果

トーナメント勝者ラウンド

wround

トーナメント敗者ラウンド

lround

決勝戦

FUT-K 0 – 0 opuCI_3D

ルールにより、FUT-Kの勝利。

最終順位

  • 優勝:FUT-K(福工業大学)
  • 準優勝:opuCI_3D(大阪府立大学)
  • 3位:ODENS(大阪電気通信大学)

ODENSは去年より、順位を一つ上げて、3位でした。

ダイジェストビデオ

まとめ

直前までひたすら開発を続けていたので、大会前はとても大変でした。試合中は、基本的に見守ることしかできませんでしたが、予選のFUT-Kとの試合で起きた不具合は、合間を見つけて修正を行っていました。RoboCupJO2010-award-s

今回の戦績は、予選で6戦4勝2敗1分の3位、決勝トーナメントでは3位となりました。今年は、去年と比べて参加チームが多くなった中で順位を一つ上げる事が出来たのは、良かったと思います。しかし、歩行速度が遅いため、抜かれるとどうしても追いつくことができない点、相手ロボットに対してボールを蹴って取られてしまう点、守備面では相手からきっちりボールを奪い取ることができなかった点など、まだまだ改善しなければならない所がたくさんありました。

次の大会までに、プログラムの改良を重ねて、さらに上位を狙えるように取り組もうと思います。